いよいよ1ヶ月後に迫りました、2017ワールドベースボールクラシック。
前回大会では、日本は残念ながら準決勝でプエルトリコに負けて、3連覇とはなりませんでした。
そんな中、今回で4回目を迎えますが、毎年のように、ルール改正や大会時期が日本のプロ野球、アメリカのメジャーリーグ開幕の直前におこなわれるため、特にメジャーリーグ側の圧力などで、日本人メジャーリーガーが出場出来ないと、いまひとつ大会全体に本気度が感じられず、今年で終わるのではないかという声も上がっています。
さらに、先日、日本ハムの大谷選手が出場を辞退するなど、今回の侍ジャパンは大丈夫か?期待出来ない!とも言われております。
それでも、いざ開幕すると応援する人も多いと思います。
この記事では、開催するまでに知っておきたいWBC2017のルールについて、多くの人が気になる「投手の球数制限」「順位決定方法」「タイブレーク」を中心にお話していきます。
選手の登録と予備投手とは?
今回のWBCの選手登録は28名とされており、投手13人以上、捕手2人以上を登録しなければいけません。
そして、何と言いましても、今回は予備投手制度が導入され、投手10名を本登録とは別に予備として登録出来る制度が出来ました。
この予備投手は、1次ラウンドと2次ラウンドが終了した地点で、投手に限り最大2名まで変更出来る制度です。
この制度はアメリカ有利のルールと言われており、優秀なメジャーリーガーが1次リーグから本登録されて試合に出るとなると、怪我や大会後のコンディション(メジャー開幕にむけて)不良を引き起こすから、2次ラウンド終了後のアメリカラウンドで、1試合だけ出場させるという事が可能なわけです。
もともと、怪我などによる登録選手の入れ替えは「特別措置」としてあるわけですが、今回の予備投手枠との兼ね合いはどうなるか不明です。
1次ラウンド(4チーム総当たり)
まずは、WBC2017出場全16カ国が4つのグループに分かれて、総当たりで対戦します。
組み合わせ
プールA | プールB(東京ドーム) | プールC | プールD |
オランダ | 日本 | ドミニカ | プエルトリコ |
台湾 | キューバ(3/7 19時) | アメリカ | イタリア |
韓国 | 中国(3/10 19時) | カナダ | ベネズエラ |
イスラエル | オーストラリア(3/8 19時) | コロンビア | メキシコ |
順位決定方法
各プール総当たりで戦い、上位2チームが、次の2次ラウンドに進めます。
順位は勝敗で決まりますが、勝数が同じ場合、前回大会は、当該チーム同士の得失点率差(「総得点/総攻撃イニング数」と「総失点/総守備イニング数」の差)で順位を決定していました。
ほとんどの場合、得失点差と得失点差率で順位が変わる事はありませんが、得失点差率はイニングが絡むため、攻撃イニングが8回しか無い場合、9回1死からサヨナラ打、延長戦などで順位がひっくり返る事があります。
しかし、野球はサッカーと同様に得失点で決めるのはおかしいとの声が出たため、今回は新しくプレーオフ制度というものが導入されます。
実際に4チームで総当たりで試合をしますと、3チームが同じ勝敗で並ぶことがよくあります。その場合、まずは、同率順位の規則により、当該チーム間の失点率で順位を決定します。
仮に勝敗とスコアが以下の場合、順位決定方法はどのようになるか説明致します。
3チームが2勝1敗(1位~3位)で並んだ場合
A | B | C | D | |
A(1位 2勝1敗) | ○(4-1)先攻 | ●(1-2)後攻 | ○(3-2) | |
B(2位 2勝1敗) | ●(1-4)後攻 | ○(5-4)先攻 | ○(3-1) | |
C(3位 2勝1敗) | ○(9-7)先攻 | ●(4-5)後攻 | ○(10-4) | |
D(4位 0勝3敗) | ●(2-3) | ●(1-3) | ●(4-10) |
この時、延長の試合は無しとして考え、失点率=(総失点)/(守備イニング)で計算されるため、A,B,Cの3チーム間における各チームの失点率の計算は、以下のようになります。
チーム | 総失点 | 守備イニング数 | 失点率 |
A | 3 | 18 | 0.16777 |
B | 8 | 18 | 0.44444 |
C | 12 | 18 | 0.66666 |
この場合は、A,B,Cが2勝1敗で並び、ここでは同率順位の規則でAが1位、Bが2位、Cが3位とします。
1位のAは自動的に2次ラウンドに進みます。2位のBと3位のCがプレーオフとして1試合戦い、勝者が最終順位2位として2次ラウンド進出が決まります。(Cが勝つと最終順位2位、Bは3位となり、Cが2次ラウンドにいきます。)
3チームが1勝2敗(2位~4位)で並んだ場合(WBC2017プールDの結果を引用)
プエルトリコ | イタリア | ベネズエラ | メキシコ | |
プエルトリコ(3勝0敗) | ○(9-3) | ○(11-0) | ○(9-4) | |
イタリア(1勝2敗) | ●(3-9) | ●(10-11)延長10回後攻 | ○(10-9)9回無死サヨナラ勝ち | |
ベネズエラ(1勝2敗) | ●(0-11) | ○(11-10)延長10回先攻 | ●(9-11)後攻 | |
メキシコ(1勝2敗) | ●(4-9) | ●(9-10)9回無死サヨナラ負け | ○(11-9)先攻 |
この場合は、イタリア、ベネズエラ、メキシコが1勝2敗で並び、ここでは同率順位の規則で失点率で順位を決定します。
なお、失点率の考え方として、守備イニングについて考慮しなければいけないことがあります。
守備イニングは試合終了時における守備についていた時のイニング数であるため、サヨナラ負けをした場合、サヨナラ負けが決まった段階のイニング数が分母として計算されます。勿論、この時の失点は総失点にカウントされます。
今回は、イタリア-メキシコの試合で、9-5で勝っていたメキシコが、9回裏に1アウトも取れずに5失点でサヨナラ負けをした時の失点率の計算の不手際で、メキシコチームがプレイオフに進出決定と言われていたのに、失点率の計算により、1次リーグ敗退が決まり選手が激怒するシーンがありました。
この場合は、総失点は10で、守備イニングは8(最初は9で計算されていた)となるため、分母が小さくなり失点率が高くなってしまいました。
チーム | 総失点 | 守備イニング数 | 失点率 |
イタリア | 20 | 19 | 1.05263 |
ベネズエラ | 21 | 19 | 1.10526 |
メキシコ | 19 | 17 | 1.11764 |
1勝2敗同士の失点率の計算の結果、イタリアは2位、ベネズエラ3位、メキシコ4位という結果になりました。
1位のプエルトリコは自動的に2次ラウンドに進み、4位のメキシコはプレーオフに参加する事は出来ません。
2位のイタリアと3位のベネズエラがプレーオフとして1試合戦い、勝者が最終順位2位として2次ラウンド進出が決まります。(結果は、ベネズエラが勝利したため、最終の順位はベネズエラ2位、イタリア3位となりました)
簡単に言えば、プレーオフ制度は、一度順位を決定した後に、3チームが同率の場合、2位と3位チームの勝者が次のラウンドに進めますよ!という意味です。
プレーオフは各プール総当たり終了後の翌日に開催されます。日本の場合、3月11日となります。
球数制限
1次ラウンドは65球まで。50球以上投げた場合は中4日、30球以上もしくは2試合連続登板は中1日空けます。
ただし、敬遠をしようとした時に、明らかな敬遠であることを意思表示すれば、その間の球数はカウントされません。(今大会から)
タイブレーク制度
延長10回が終了しても同点の場合、11回からは無死1.2塁で試合を始めるルールです。前回は13回からの適用でしたが、試合時間短縮や投手への負担を減らす目的があるようです。
しかし、野球関係者のほとんどはタイブレーク制度に対して否定的であるが、去年の11月に開催された強化試合のようにタイブレークの戦略をきちんとたてる必要があります。(バントをして確実に2点をとるか、攻撃的に攻めて大量点を狙うか)
コールドゲーム
5回終了時に15点差、7回以降は10点差がついた地点でコールド試合が成立して、試合終了となります。
予備投手枠
1次ラウンド終了後、怪我に関係なく、投手を最大2名まで交代出来ます。
2次ラウンド(4チーム総当たり)
各プールで勝ち上がった2チームがプールE、プールFに分かれて、1次ラウンドと同様に総当たりで対戦します。
組み合わせ
プールE | プールF |
日本 | ドミニカ共和国 |
オランダ | プエルトリコ |
イスラエル | アメリカ |
キューバ | ベネズエラ |
順位決定方法
1次ラウンドと同様。勝者はアメリカラウンド(準決勝)に進めます。
球数制限
2次ラウンドは80球まで。50球以上投げた場合は中4日、30球以上もしくは2試合連続登板は中1日空けます。
タイブレーク制度
1次ラウンドと同様。
コールドゲーム
1次ラウンドと同様。
予備投手枠
2次ラウンド終了後、怪我に関係なく、投手を最大2名まで交代出来ます。
アメリカラウンド(準決勝)(決勝)
プールE、プールFで勝ち上がった2チームがトーナメント方式で争います。
組み合わせ(未決定)
準決勝ではプールE1位とプールF2位、プールE2位とプールF1位が対戦し、勝者が決勝に進めます。
球数制限
準決勝、決勝とも95球まで。準決勝で30球以上投げた場合、決勝では投げられない。
タイブレーク
1.2次ラウンドと同様。
コールドゲーム
準決勝は適用。決勝は無し。
最後に
WBCのルールは毎年変更になっているため、試合をする侍ジャパンの選手、監督、コーチも勝敗や戦略に大きく影響しますし、見る側もルールをきちんと把握しないとなかなか試合にのめり込めないと思いますので、まずはこの記事に書かれているルールを抑えておけば、大丈夫かと思います。