プロ野球の結果を新聞やネットで見る時に、打者の成績欄にOPSという項目を見る事があると思います。
現在のプロ野球は、打者のタイトルは打率、本塁打、打点、出塁率、最多安打数、盗塁数がありますが、OPSはありません。
そのため、OPSという用語を聞いたり見かけたりする事があっても、いまひとつ何の事か分からないという方は多いのではないでしょうか?
それでも、近年のプロ野球はOPSもひとつの打者の評価として認知されつつありますが、OPSは本当に打者の指標として意味があるのでしょうか?
この記事では、OPSの計算方法、OPSの概念、打者の指標について解説していきます。
野球で勝つために打者として必要な事
OPSについて説明する前に、野球で勝つために打者に求められる事についてお話していきます。
冒頭でも触れましたが、プロ野球において打者の主なタイトルとして打率、本塁打、打点があり、すべてを獲得すると三冠王と言われ、打者として名誉あるタイトルとして評価されています。
しかし、いくら打率、本塁打、打点が良くても野球は勝てるでしょうか?
しかも、このような評価方法は個人成績としての要素が強く、野球はチームスポーツであるため、チーム成績としての要素としては弱くなります。
当然ですが、野球で勝つためには得点をいれなければいけません。そのため、打者はいかに得点に貢献出来るかで評価されるべきとの考えが広がるようになりました。
得点を入れるためにはランナーとして出塁しなければいけません。また、いくら出塁してもホームベースを踏まないと得点にならず、4つの塁(一塁、二塁、三塁、ホームベース)を踏んで初めて得点となります。そのため、単打よりは、2塁打、3塁打、本塁打の方が得点に絡みやすくなります。
OPSとは何か?
打者はいかに得点に貢献出来るかで評価されるべきという考えは、ビル・ジェームズが、得点の多い方が勝つという野球のルールにおいて、攻撃のランキングが常に打率順で掲載されていることに疑問を感じていた所からスタートしました。
ビル・ジェームズは、ディック・クレイマーやピート・パーマーと一緒に新しい打者の評価を決める指標としてOPSを考えました。
OPSは得点との相関関係を表すのに向いた指標であり、この数字が高い打者程、得点機会を作る能力が高いとされます。
OPSの計算方法とは?
OPSは、出塁率と長打率の和で求める事が出来ます。
出塁率は、安打、四球、死球などで塁に出る能力を表す指標であり、長打率は、2塁打、3塁打、本塁打など長打を打つ能力を表す指標となります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
OPSの数値に対する評価について
OPSの計算方法はすごく簡単に求める事が出来ますが、この計算によってはじき出された数値に対する評価はどうなのでしょうか?
ビル・ジェームズは数値に対する評価として、以下のようにランク付けをしました。
ランク | 評価 | OPS |
A | 素晴らしい | 0.900以上 |
B | 非常に良い | 0.8334~0.8999 |
C | 良い | 0.7667~0.8333 |
D | 並 | 0.7000~0.7666 |
E | 平均以下 | 0.6334~0.6999 |
F | 悪い | 0.5667~0.6333 |
G | 非常に良い悪い | 0.56666以下 |
OPS指標の欠点
走塁能力は加味されない
例えば、ヒットを打ってランナーが1塁となったときに、盗塁すれば実質2塁打と同じ状況を作り出す事が出来ます。
しかし、出塁率も長打率も盗塁の要素が含まれていないため、走塁能力による得点の貢献度は除外されてしまいます。
スラッガータイプが有利でリードオフマンは不利
OPSは出塁率と長打率の和で求めますが、長打率の方が出塁率に比べて差が大きく広がるため、出塁率が低くても長打をたくさん打てば、出塁率の低さを充分カバーする事が出来るからです。
以下に、2016年のセ・リーグのOPSが高い順にランキング形式で記載しました。
出塁率 | 長打率 | OPS | |
1:筒香 嘉智 | 0.430 | 0.680 | 1.110 |
2:山田 哲人 | 0.425 | 0.607 | 1.032 |
3:鈴木 誠也 | 0.404 | 0.612 | 1.015 |
4:坂本 勇人 | 0.433 | 0.555 | 0.988 |
5:バレンティン | 0.369 | 0.516 | 0.885 |
6:丸 佳浩 | 0.389 | 0.481 | 0.870 |
7:村田 修一 | 0.354 | 0.505 | 0.858 |
8:新井 貴浩 | 0.372 | 0.485 | 0.857 |
9:福留 孝介 | 0.392 | 0.453 | 0.845 |
10:梶谷 隆幸 | 0.359 | 0.480 | 0.838 |
こう見ますと、出塁率が高いのに、出塁率より低い選手よりOPSが低い選手が何人かいることが分かります。特に福留選手は、出塁率ではランキング内では5位にも関わらず、長打率の関係でOPSが9位まで急降下しております。
このランキングから見ても、出塁率よりも長打率の影響を受けるのがOPSと言えます。
2016年プロ野球得点とOPSのデータ
パ・リーグ | 得点 | 打率 | OPS | 長打率 | 出塁率 |
ソフトバンク | 637 | 0.261 | 0.727 | 0.386 | 0.341 |
日本ハム | 619 | 0.266 | 0.725 | 0.385 | 0.340 |
西武 | 619 | 0.264 | 0.730 | 0.395 | 0.335 |
ロッテ | 583 | 0.256 | 0.689 | 0.363 | 0.326 |
楽天 | 544 | 0.257 | 0.692 | 0.368 | 0.324 |
オリックス | 499 | 0.253 | 0.671 | 0.355 | 0.317 |
セ・リーグ | 得点 | 打率 | OPS | 長打率 | 出塁率 |
広島 | 684 | 0.272 | 0.765 | 0.421 | 0.343 |
ヤクルト | 594 | 0.256 | 0.709 | 0.378 | 0.331 |
DeNA | 572 | 0.249 | 0.694 | 0.385 | 0.309 |
巨人 | 519 | 0.251 | 0.694 | 0.384 | 0.310 |
阪神 | 506 | 0.245 | 0.662 | 0.351 | 0.312 |
中日 | 500 | 0.245 | 0.662 | 0.353 | 0.309 |
一般的に得点とOPSの相関係数は0.941と言われています。(1に近づけば近づくほど、相関関係が強い事を示す)
2016年のプロ野球のデータから見ると、セ・リーグはOPSが高いチーム程得点を多くとっている傾向がはっきり見られたが、パ・リーグは上位3チームのOPSはそこまで大差ないのに、得点ではソフトバンクと日本ハム、西武との差が少し開いています。
打率とOPSに対する得点の相関関係は、OPSの方が相関があるので、得点を生み出す能力としては打率よりはOPSの方が指標として有効と言えますが、他の要素(相手のエラーや犠打など)も絡んでくるので、あくまでも参考として見ると良いと思います。
最後に
まだまだ、OPSに対して馴染みのない方も多いと思いますが、OPSの指標を覚える事で、攻撃面における得点を生み出す能力の高さを知る事が出来ます。
しかし、OPSも完璧ではないため、やはり打率や犠打、盗塁と言った他の項目も加味しないといけないので、ひとつの指標として2017年のプロ野球の成績を見ると良いでしょう。