FA宣言とは、プロ野球選手が所属する球団以外の球団と自由に契約交渉出来る権利の事です。
通常、プロ野球選手は、ドラフトで指名された球団と契約する事が多いですが、ある条件を満たす事で他球団と自由に契約交渉する事が出来ます。
もちろん、FAの権利を得ても行使するしないは選手の自由ですし、FA宣言しても、他球団の評価を聞きつつ、残留交渉しても構いません。
FAの権利はシーズン中に発生する事が多く、FAの権利を獲得すると、来シーズンの動向が気になり、球団にとって有望な選手は他球団に獲られる前に契約を結ぶ事があったり、他球団のスコアラーなどが有望な選手の獲得に動くなど、来シーズンのチーム編成にも大きな影響を与えるため、球団にとってもファンにとっても、かなり気になりますよね。
この記事では、出来るだけ簡単に、FA宣言のルールとそれに伴う、プロテクト、補償制度について解説していきます。
FAの種類と権利を得るための条件とは?
FAは、誰でも簡単に利用出来る制度ではありません。
入団してすぐにFA宣言するということは、会社で新入社員がすぐに転職するのと同じ事です。
新入社員でもよほどのブラック企業でない限り、転職しようと考えていても、ある程度経験やスキルを身につけてからにしますよね。(今の時代にはそぐわないかもしれませんが、最低でも3年間は在籍してから転職を考えた方が良いと言われるように・・・)
選手も入団した球団で、プロ野球選手として技術や精神面を鍛えて、活躍して一流選手として自分の価値を高める事で、他球団の評価も上がりますので、今の球団より良い条件で契約する事が出来るかもしれません。
話はそれましたが、FAは「国内FA」と「海外FA」の2つあります。各FAの概要と権利発生条件は以下の通りです。
国内FA
国内FAは以下の条件を満たした選手に権利が発生します。
・2006年までのドラフトで入団した全選手が、一軍登録期間1160日以上の場合。
・2007年以降のドラフトで入団した高校生選手が、一軍登録期間1160日以上の場合。
・2007年以降のドラフトで入団した大学生、社会人選手が、一軍登録期間1015日以上の場合。
一軍登録期間とは、レギュラーシーズンとクライマックスシリーズが開催されている間に、一軍に登録されていた日数の事です。
ただし、1シーズン最大で145日しかカウントされないため、一軍登録期間が145日を超えても145日としてカウントされます。
つまり、国内FAの権利を得るためには、実質7年(145日×7シーズン)もしくは8年(145日×8シーズン)以上、一軍登録し続けないと発生しません。
国内FAは、権利が発生したそのシーズンオフから自球団を含めて12球団(せ・リーグ6球団、パ・リーグ6球団)と契約交渉する事が出来ます。
海外FA
海外FAは海外の球団と契約交渉する事と思っている人がいますが、海外FAは、国内の球団だけでなく海外の球団とも自由に契約交渉が出来ますよ。という事です。
メジャーリーグを目指している人以外は、実質国内FAとほぼ変わりません。
海外FA権は、一軍登録期間が1205日以上(実質9年)あれば誰でも権利を得る事が出来ます。
FA宣言した場合としなかった場合はどうなるの?
FA宣言した場合
FA宣言は日本シリーズが終了した翌日から、土日祝を除く7日以内にFA宣言する事を通達し、8日目にFA宣言選手として告示され、翌日から球団と自由に契約交渉をする事が出来ます。
2018年の日本シリーズは、10月27日(土)~11月4日(日)に開催されるため、FA宣言の流れは以下の通りになります。
日本シリーズ | 通達期間 | FA宣言選手告示 | 契約解禁日 |
第4戦で終了(10月31日(水)) | 11月1日(木)~9日(金) | 11月12日(月) | 11月13日(火) |
第5戦で終了(11月1日(木)) | 11月2日(金)~12日(月) | 11月13日(火) | 11月14日(水) |
第6戦で終了(11月3日(土)) | 11月5日(月)~13日(火) | 11月14日(水) | 11月15日(木) |
第7戦で終了(11月4日(日)) | 11月5日(月)~13日(火) | 11月14日(水) | 11月15日(木) |
FA宣言した場合は、移籍しようが残留しようが、今回のFAの権利は消滅します。
FA宣言した後は、次のFAの権利を得るには実質4年後(一軍登録期間は580日)になります。
FA宣言しなかった場合
FAの権利を獲得しても、FA宣言しなければ、翌年に持ち越す事が出来ます。
球団から引き留められたり、自分の成績が思わしくない場合など、他球団にアピール出来ないと判断すれば、翌年頑張ってからFA宣言するパターンも考えられます。
FA宣言に伴うプロテクト、補償制度について
FAの権利を獲得出来る選手は、ほぼ全員優秀な成績を収めています。
FAの権利を得るという事は、一軍の世界に長くいて活躍しているからです。
そのため、球団にとって選手がFA宣言されるとチームにとってかなり痛手を負うことになります。
そこで、FA宣言のルールとして、FA宣言選手が他球団に移籍した場合、移籍先球団は旧球団に対して補償制度として「人的補償」および「金銭補償」をしなくてはいけません。
移籍先球団は、FA選手を獲得して戦力を整える代わりに、旧球団に対して人的補償が発生するため、プロテクトという制度で、手放したくない選手を囲い込む権利が与えられています。
そのため、旧球団側がプロテクト名簿をみて、欲しい選手がいないと思えば、人的補償を要求せずに、金銭補償のみを要求する事も可能です。
金銭をもらって、優良新外国人選手を獲得した方が良いと判断するパターンがよく当てはまります。
しかし、FA宣言した選手全員が補償対象になるかというとそういうわけではなく、補償対象内容は旧球団在籍時の選手の年俸の順位によってFA選手のランクが決められ、ランクによって変わってきます。
FA選手のランクと補償内容とは
初めてのFAの場合
ランクA | ランクB | ランクC | |
旧球団内の年俸 上位1位~3位 | 旧球団内の年俸 上位4位~10位 | 旧球団内の年俸 11位以下 | |
金銭補償 | 旧年俸の80% | 旧年俸の80% | 補償は発生しない |
人的補償 | プロテクト外選手1名+旧年俸50% | プロテクト外選手1名+旧年俸40% | 補償は発生しない |
2度以上のFAの場合
ランクA | ランクB | ランクC | |
旧球団内の年俸 上位1位~3位 | 旧球団内の年俸 上位4位~10位 | 旧球団内の年俸 11位以下 | |
金銭補償 | 旧年俸の40% | 旧年俸の30% | 補償は発生しない |
人的補償 | プロテクト外選手1名+旧年俸25% | プロテクト外選手1名+旧年俸20% | 補償は発生しない |
上の表をみると、FA選手の年俸が高ければ高いほど、FA選手を獲得した球団は、旧球団に対して補償内容が厳しめになります。
プロテクトについて
FA選手を獲得した球団は、旧球団に対して人的補償が発生するため、流出を防ぎたい選手をプロテクトしないといけません。
旧球団はプロテクトの名簿をみて、旧球団は人的補償を使うのか、金銭補償のみにするか決定します。
なお、人的補償にはルールが決められており、以下の条件を満たす選手を人的補償として獲得する事は出来ません。
・プロテクトした28名の選手
・直近のドラフトで獲得した新人選手
・FA件を獲得した外国人選手(日本人扱い)