オリンピックにおける体操は、日本にとって最もメダル獲得が期待出来る競技の一つです。
体操競技は、技の正確性や難易度などを採点して順位が付けられますが、それを抜きにして見てもそのパフォーマンスに驚きと感動を覚えます。
正直なところ、体操競技に関してルールや技、採点の仕方などほとんどの方は詳しく知らないと思います。
この記事では、体操競技における種目や技についてお話する事で、リオオリンピックのテレビ中継を通じて体操競技をより楽しんでいただけたらと思います。
体操種目
男子は「床→鞍馬→吊輪→跳馬→平行棒→鉄棒」の6種目
女子は「跳馬→段違い平行棒→平均台→床」の4種目
で構成されています。
なお、体操を行なう順番は、男女とも左側から順に行います。
体操競技
体操競技には、全部で3つの競技があります。
団体(予選5-4-3制)(決勝5-3-3制)
各国5名のチームで出場し、各種目を4名がおこないます。そして、各種目チーム内上位3名の得点の合計が、団体予選の得点になります。つまり、各種目1名までミスが許される状況化になります。団体予選(全12チーム)の上位8チームが団体総合決勝に進みます。
団体決勝では、各種目を3名がおこない、3名の得点がそのまま団体決勝の得点になり、優勝が決まります。つまり、各種目で誰かがミスをすると結果が大きく変わり致命傷となります。
団体予選は、実は後述の個人総合、種目別のそれぞれの予選も兼ねています。そのため、団体総合に出場する人の中で、個人総合や種目別に出場される方は、団体予選で全種目を行わなければいけません。その結果が個人や種目別の予選の得点にも反映されます。
ここまでの説明を図に示すと下のようになります。(男子体操を例に説明します)
日本代表 | |||||||
団体予選 | 床 | 鞍馬 | 吊輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 個人予選得点 |
A選手 | 14.4 | 14.8 | 14.5 | 14.4 | 14.9 | 14.9 | 87.9 |
B選手 | 14.7 | 14.1 | 14.6 | 14.3 | 14.8 | 14.6 | 87.1 |
C選手 | 14.3 | 14.6 | 14.6 | 43.5 | |||
D選手 | 14.7 | 14.4 | 14.7 | 14.8 | 14.6 | 14.4 | 87.6 |
E選手 | 14.6 | 14.1 | 14.5 | 43.2 | |||
上位3名の合計 | 43.8 | 43.8 | 43.9 | 43.8 | 44.3 | 44.0 | |
団体予選得点 | 173.6 |
上の得点は、説明補足のための例として挙げた得点であるため、正確な得点表記ではありません。(実際は小数点第3位までだしています。14.0点は正確には14.000点になります)
個人総合
個人総合の予選は団体予選の結果は反映されます。そのため、個人戦を勝つためには団体戦でチームに貢献する姿勢が問われます。
個人戦は上位24名が決勝に進められますが、実は同じチームから3名以上出場する事が出来ません。(二名枠制を導入しているため)
もともと二名枠制は、表彰台をひとつの国で独占するのを避けるために設けられました。これはかつての日本男子が表彰台を独占した事がきっかけになります。
先程の表でB選手の87.1点に太字がない理由は、二名枠制のため、A選手(87.9点)、D選手(87.6点)に及ばず仮に上位24番目の得点が85.0点とすると、B選手は上位24位以内に入っているにもかかわらず、個人戦決勝に進む事が出来ません。
私個人的な意見とすれば、二人枠制は撤廃したほうが良いと思います。二人枠制は、団体戦と個人戦を同じモチベーションで戦う事が出来なくなるからです。個人戦の成績を重要視しすぎて、本来団体戦で力を挙げて戦うところに水を差す事になるからです。
ただし、個人決勝でD選手が体調不良で決勝の舞台に立てない場合、二人枠制のひとつが空くため、同一チーム内で団体予選で全種目演技していたら代わりに出場する事が出来るため、この場合B選手が出場することが出来ます。
種目別
種目別の予選は、団体予選の結果がそのまま採用されます。種目別予選の上位8名が決勝に進めますが、種目別も二名枠制であるため、いくら得点は上位8位に入っても、同じチーム内で3位の場合は決勝に進む事は出来ません。
競技の採点方法について
体操の採点方法は、演技価値点(Dスコア)と実施点(Eスコア)の2つの得点の合計で競います。
また、静止技は減点対象になります。体操は、1回の演技中に対して、複数の技を組み合わせなければならないので、途中で静止すると違反になります。
各得点についてもう少し詳しく掘り下げてみましょう。
演技価値点(Dスコア) 加点法
演技中に実施する技の難度(運動の難しさ)や構成によって、技ごとの点数が決められており、その点数を合計したスコアが演技価値点です。上限はなく、難度によってA~Gランクに分類されています。
技難易度 | A | B | C | D | E | F | G |
得点 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 |
上の難度に従って、難度・加点を加えることができます。
ただし、カウントするのは、各種目、男子は 10技 、女子は 8 技が対象になります。
ただし、1つの技が難度認定されるのは1回までであり、高い難度の同じ技を、繰り返しやってもカウントはされません。
カウントする技数を超えた場合、難易度が高い技から順にDスコアが付けられます。
ただし、跳馬は技の種類が1つしかないため、技そのものに得点がついています。
さらに、特別要求という項目があり、さまざなな難易度の技をおこなうだけで2.5点がもらえます。基本的にさまざなな技をやれば大抵もらえる得点になります。
例えば、鉄棒でE技を4つ、D技を1つ、C技を3つ、B技を2つした場合、特別要求もつくので、
E技(0.5×4)=2点、D技(0.4×1)=0.4点、C技(0.3×3)=0.9点、B技(0.2×2)=0.4点、特別要求=2.5点 計6.4点
がDスコアになります。
実施点(Eスコア) 減点法
実際の演技に対して、規定の減点項目に応じ、10点満点からの減点方式で算出したのが実施点です。技の高さ不足や不適当な技の実施、馬体軸のずれなどが減点対象となります。
リオオリンピック代表選考方法
リオオリンピックの代表選考大会は4月1日~3日に開催されます全日本選手権、5月4日と5日に開催されますNHK杯、6月4日と5日で開催されます全日本種目別選手権の3つの大会になります。
これらの大会から男子と女子で以下のように選考をおこないます。ただし、男子は内村航平選手が圧倒的な実力が備わっているため、内村選手を中心とした選考というかなり特殊な方法をとっています。
なお、男女とも日本代表は5名まで選出されます。
男子選考条件
①NHK杯において内村選手を除いた最上位の選手→即内定
②全日本種目別選手権終了後、3つの選考大会の成績から、内村選手と①の内定選手との組み合わせで最もチーム得点が高くなる選手
③ ②において、残り3枠のうち、一人はNHK杯5位以内、もうひとりは12位以内の選手が選考対象になります。
女子選考条件
①NHK杯において個人総合上位3選手
②NHK杯個人総合12位以内(①を除く)で、①の選手との組み合わせで2種目以上のチーム貢献度が認められる3選手
③全日本個人決勝、全日本種目別決勝のどちらかに出場し、①の選手との組み合わせでチーム貢献度が高くなり、最も貢献度が高い種目でDスコア6.0以上の選手1名
④ ③までに選出された7名からオリンピック開催前に5名に絞られる。
男子も女子も3つの選考大会のうち、NHK杯をかなり重要視している事が分かるため、オリンピック出場にはNHK杯を制する事が出場への第一歩のように思います。
リオオリンピック日本代表選手(2016年6月21日現在)
リオオリンピックに出場する体操日本代表選手の一覧を以下にまとめました。なお、女子は有力候補7名から5名に絞る段階のため、内定はまだ未定です。
男子体操 | |||
氏名 | 年齢 | 所属 | 得意種目 |
内村航平 | 27 | コナミスポーツ | ゆか・平行棒 |
加藤凌平 | 22 | コナミスポーツ | ゆか・平行棒 |
田中佑典 | 26 | コナミスポーツ | 平行棒・鉄棒 |
山室光史 | 27 | コナミスポーツ | つり輪 |
白井健三 | 19 | 日体大 | ゆか |
女子体操 | |||
氏名 | 年齢 | 所属 | 得意種目 |
寺本明日香 | 20 | 中京大学/レジックスポーツ | 段違い平行棒 |
村上茉愛 | 19 | 日本体育大学 | ゆか |
杉原愛子 | 16 | 梅花高校/朝日生命 | 段違い平行棒、ゆか |
宮川紗江 | 16 | セインツ体操クラブ | 跳馬 |
内山由綺 | 18 | スマイル体操クラブ | 段違い平行棒、ゆか |
テレビ放送予定
8月9日(火) NHK 決勝(男子団体)
8月11日(木) 日本テレビ系 個人・団体ダイジェスト
8月11日(木) フジテレビ系 決勝(男子個人総合) 4:00~7:00
8月15日(月) NHK 種目別決勝(男子ゆか・あん馬)
8月17日(水) NHK 種目別決勝(男子平行棒・鉄棒)
8月21日(日) NHK 新体操個人総合決勝
しっかりまとめてあり、助かりましたが、「5-4-3制」の説明のところの例の得点が「9.3」「9.5」など10点満点らしき数字になっているのが惜しいです。「この情報は古いものなのでは?」と感じさせてしまいます。
今は、男子で五輪レベルなら14~16点くらいではないかと思います。
先ほどコメントしたものですが、コメント公開されなくていいですよ。
直接お知らせする方法がわからなかったのでコメントにしただけです。
あの得点のところだけ修正されたほうがよいと思います。
(これも公開しなくていいです)
ついでにもう1つ。(これも公開しなくていいです)
女子代表候補の「川崎真理菜」選手の「川崎」は「河崎」が正しいです。
25日に代表5人も決定しました(寺本・村上・杉原・宮川・内山)。
けいこさん。
この度はスポッツライトの記事を読んでいただきありがとうございました。
ご指摘の箇所に関して訂正しました。
また、新しい補足情報もありがとうございます。
今後ともスポッツライトのブログをよろしくお願いします。