ある程度大会に出場しているランナーは、一度は陸連登録という言葉を耳にしたことがあると思います。
大会のエントリー時も陸連登録者と一般者とカテゴリーを分けて募集する事が多く、陸連登録者は大会を走るうえで、色々と優遇される事が多いため、実業団選手並みのレベルがないと登録出来ないのではと思う人は多いです。
しかし、陸連登録は誰でも出来ますし、僕も今は登録しておりませんが、登録経験があります。
この記事では、マラソンをやり始めた2013年10月から2016年3月まで陸連登録をしていた僕が、陸連登録をした理由とやり方についてお話していきます。
また、なぜ今は登録していないのかもお話する事で、陸連登録をしようか迷っているランナーの判断の手助けとなれば幸いです。
なぜ陸連登録をしようと思ったのか?
公認記録として残るから
僕が陸連登録した一番の理由は、もともと競技思考が強く、自分のマラソンの記録を公認記録として残したいと思ったからです。
公認記録を残すためには、陸連登録して走らないと公認記録として認められません。
他に公認記録を取得する理由として、大会参加資格に公認記録での参加基準タイムをクリアする事が義務づけている大会に出場することが可能になるからです。
公認記録とは、陸連登録者が陸連公認大会で出した記録の事で、陸連公認コースであればほとんど陸連公認大会にあたります。(陸連公認コースでも陸連公認大会ではない大会も存在します。)
陸連公認コースとは、
①コースの長さ>競技距離、コースの誤差は競技距離の1000分の1以下。
②スタートとゴールの直線距離が競技距離の半分以下。
③スタートとゴールの標高差は、1/1000km(1kmたり1mの誤差)
つまり、
コース誤差 | スタートとゴールの直線距離 | スタートとゴールの標高差 | |
フルマラソン | 0~42mオーバーまで | 21.0975km以下 | 42m以下 |
ハーフマラソン | 0~21mオーバーまで | 10.54875km以下 | 21m以下 |
の条件を満たしていれば、基本的に公認コースとしてみとめられます。
公認記録が必要な大会一部抜粋
大会 | 参加資格 | 備考 |
びわ湖毎日マラソン | 2時間30分以内(フル) 1時間40分以内(30km) 1時間10分以内(ハーフ) 1時間05分以内(20km) | 2018年募集時 |
福岡国際マラソン | 2時間35分以内(フル) 1時間45分以内(30km) 1時間10分以内(ハーフ) | 2018年募集時 |
大阪国際女子マラソン | 3時間10分以内(フル) 2時間11分以内(30km) 1時間28分以内(ハーフ) 37分以内(10km) | 2018年募集時 |
タイム向上のため(スタート位置の優遇)
もうひとつは、自分を追い込んでタイムを向上させるためです。
正直、公認記録を残そうと考えるほとんどのランナーのレベルは高いです。
陸連登録者は大会時のスタート位置が優遇されたりゼッケンが違うため、あまりに遅く走ると周りのランナーからの視線が痛く感じるため、嫌でも速く走らなければいけないというプレッシャーをかけていました。
実際に2013年に走った「2013越後湯沢秋桜ハーフマラソン」(陸連未登録)と「第36回西脇子午線マラソン」(陸連登録)では、陸連登録した方が11分も速く完走しました。
しかも、西脇子午線マラソンは、陸連登録するとスタート時点で先頭ブロックに並ぶ事が出来ました。
そのため、越後湯沢秋桜ハーフマラソンでは号砲からスタートまでに14秒かかりましたが、西脇子午線マラソンでは号砲とスタート地点を超えるまでの時間がほとんどありませんでした。
また、規模の大きいマラソン大会ほど、スタート直後は、渋滞でかなりのタイムロスが発生してしまいます。
グロスタイム(号砲からタイム測定)でなくてもネットタイム(スタートゲート通過後からタイム測定)で十分というランナーもいますが、後ろの方から走るとスタートゲートを通過しても大抵渋滞しているため、自分のペースで走れるようになるのに時間がかかってしまいます。
僕の経験上、スタート位置は前の方が渋滞回避が早い分、自分のペースにすぐに持っていきやすいです。
以下に実際の越後湯沢秋桜ハーフマラソンと西脇子午線の結果を載せていますので、比較してみてください。
陸連登録前
2013越後湯沢秋桜ハーフマラソン(2013年9月29日) | ||||
距離 | ラップタイム | グロスタイム | ネットタイム | 通過時刻 |
スタート | – | – | – | 9:33:00 |
スタート地点 | 0:00:14 | – | – | 9:33:14 |
5km | 0:25:55 | 0:26:09 | 0:25:55 | 9:59:09 |
10km | 0:23:43 | 0:49:52 | 0:49:38 | 10:22:52 |
15km | 0:23:29 | 1:13:21 | 1:13:07 | 10:46:21 |
20km | 0:28:37 | 1:41:58 | 1:41:44 | 11:14:58 |
21.0975km | 0:07:00 | 1:48:58 | 1:48:44 | 11:21:58 |
陸連登録後
第36回日本のへそ西脇子午線マラソン(2013年12月8日) | |||
距離 | ラップタイム | グロスタイム(ネットタイム) | 通過時刻 |
スタート | – | – | 10:20:00 |
スタート地点 | – | – | 10:20:00 |
5km | 0:21:24 | 0:21:24 | 10:41:24 |
10km | 0:22:18 | 0:43:42 | 11:03:42 |
15km | 0:23:54 | 1:07:36 | 11:27:36 |
20km | 0:24:47 | 1:32:23 | 11:52:23 |
21.0975km | 0:05:07 | 1:37:30 | 11:57:30 |
西脇子午線マラソン時は、陸連登録者としてのプレッシャーが半端なく、陸連登録者で最下位になるわけにはならないという、今思えばなぜそこまで追い込んでいたのかよく分かりませんが、かなり集中して練習と本番に挑んでいたのを覚えています。
ちなみにフルマラソンの自己ベストも陸連登録の部で出場しました「第23回泉州国際市民マラソン(2016)」であることから、陸連登録すると記録が伸びやすいのは、科学的根拠はなくても精神面の部分が大きく影響を与えているのかなと思いました。
スペシャルドリンクの設置が認められるから
僕が思うマラソン大会の2大ストレスは、「スタートの渋滞」と「給水での渋滞」です。
スタートの渋滞は陸連登録者は多くの大会でスタート位置が優遇されますが、給水においても大会によっては陸連登録者はスペシャルドリンクの設置という優遇を受ける事が出来ます。
一般的に給水は大会運営側が用意されたスポーツドリンクや水が中心ですが、スペシャルドリンクは自分の好みの物を給水箇所に置く事が出来ますし、一般の給水箇所とは少し離れたところに、スペシャルドリンク用の給水箇所があるため、給水箇所での渋滞を避ける事が出来ます。
給水所はどうしても多くのランナーが立ち止まったりするので、マラソンのリズムが崩れやすくストレスがたまりやすいです。
僕は1度だけ陸連登録で出場しました「あいの土山マラソン(2015)」で、スポーツドリンクの周りに補給食を巻いた状態でスペシャルドリンクを置きましたが、ウエストポーチ内にサプリや補給食を入れて走っていた僕にとって、荷物が少しでも減ったのはありがたかったです。
陸連登録のやり方とは?
陸連登録のやり方ですが、正直全然難しくありません。
各都道府県で登録のやり方が異なるので、以下のサイトの指示に従って登録をしてください。
基本的に陸連登録の有効期間は年度(4月-3月)で管理されており、例えば、2018年度に陸連登録すれば、2018年4月-2019年3月までが有効期間となります。
登録は2月末~12月末の期間であればいつでも出来ますが、仮に2018年12月に登録しても、有効期間は2019年3月までになるので注意が必要です。
陸連登録は年度毎に更新が必要であるため、陸連登録を考えている方は、新しい年度が始まる前後にするのが良いです。
陸連登録すると、JAAFのカードが届きますが、陸連登録でマラソン大会に出場する時は、JAFFカード記載のIDが必要になるので紛失する事がないように大切に保管しましょう。
なぜ陸連登録をやめたのか?
難易度が高い市民マラソン大会でも、公認記録が必ず必要とはいえないから
公認記録をもっていないと出場出来ない大会がある事はお話しましたが、それは制限時間が3時間15分の「大阪国際女子マラソン」や2時間35分の「福岡国際マラソン」といったほとんどんの市民ランナーが現実的に届かないような大会ばかりです。
制限時間4時間の「防府読売マラソン」や「大田原マラソン」、制限時間3時間30分の「別府大分毎日マラソン」は、公認記録でなくても、陸連公認コースでの記録であればほとんどの大会に出場する事が出来ます。(陸連登録していないと応募出来ない枠もあり)
僕は別府大分毎日マラソンに出場するために、サブ3.5達成を目指していますが、陸連登録しなくても出場出来るのであれば、わざわざ登録料を支払ってまで陸連登録する意味はないと判断しました。
しかし、市民ランナーが憧れる大会に出場するためには、参加資格を満たすタイムが必要ですし、ほとんどの参加資格がグロスタイムであるため、真剣に記録を狙う場合は陸連登録しておいた方がスタート位置の優遇(一部除く)が受けられるため、積極的にお勧めします。
公認記録としての有効期限が2年だから
公認記録に限ったことではないのですが、例えば僕が出場した「京都マラソン2018」の募集枠に、「サブ3.5、サブ4応援枠」がありました。
「サブ3.5、サブ4応援枠」でエントリーするには、過去2年以内の記録で男子は3時間45分以内、女子は4時間以内の完走証のコピー提出が必須でした。
他の大会も、こうした募集枠や参加条件に記録の証明が必要な場合がありますが、ほとんどが2年以内の記録が対象です。
つまり、公認記録としての有効期限は実質2年となるため、2年以上前の公認記録はほとんど価値がないと思うようになったからです。
僕は、記録の証明と自己満足の部分でも公認記録をとってきましたが、価値を考えた時に陸連登録をやめようと思いました。
最後に
僕は陸連登録を考えているランナーに言いたいのは、ある程度のレベルのランナーでない限り陸連登録はしないで欲しいです。
確かに陸連登録はタイムの速い遅い関係なく登録する事は出来ますが、陸連登録をするメリットを見る限り、レベルの高いランナーでないと、他のランナーに迷惑がかかる事が多いです。
特に、スタート位置が優遇されるとタイムが遅い陸連登録者がいると、スタート直後の渋滞の緩和に時間がかかってしまいます。
しかも、陸連登録者は最低でもサブ4を切るぐらいのレベルでない限り、陸連登録者が出場出来る大会の参加資格を見てもほとんど意味をなさないと思います。
もちろん、タイムを真剣に向上させる意思が強い人は、タイムが遅くても陸連登録する事は悪い事ではありませんが、悪気がなくても陸連登録者はタイムが遅いと周りのランナーに迷惑がかかる事が多いという事を意識してほしいと思います。