ランナーの能力を表す指標の一つである「最大酸素摂取量」。
ランナーでなくても、体力がある人や心肺機能の能力が高い人ほど最大酸素摂取量が高いというのは何となくイメージはつくのではないでしょうか?
最大酸素摂取量は学生時代に数値そのものを測定する事はほとんどありませんが、誰もが学生時代に受けてきた体力テストの項目のひとつ「20mシャトルラン」は最大酸素摂取量を相対的に測定しております。
つまり、20mシャトルランが得意だった人は、最大酸素摂取量が高い傾向にあります。
この記事では、そんな最大酸素摂取量について、詳しく解説していきます。
最大酸素摂取量とは?
ランニングなど持久力が求められるスポーツは、酸素を使ってエネルギーの源であるATP(アデノシン三リン酸)を作り、ATPが分解された時に大きなエネルギーが発生し、筋肉を動かしています。
つまり、酸素を取り込む能力が体力の有無に大きな影響を与えます。
最大酸素摂取量とは、ランニングを例にあげると、速く走れば走るほど酸素が必要になるため、酸素摂取量は多くなるが、これ以上速く走れない速度になった時の酸素摂取量が最大酸素摂取量にあたります。
具体的な定義でいうと、1分間に体内に取り込む事が出来る最大の酸素量であり、最大酸素摂取量は、体重が重い人ほど酸素が必要になるので、体重1kgあたりに換算して、(ml/kg/min)の単位で表します。
一般的な最大酸素摂取量の平均値は?
厚生労働省による「健康づくりのための運動基準2006」の報告書から最大酸素摂取量の基準値は以下のように示されています。
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | |
男性 | 40 | 38 | 37 | 34 | 33 |
女性 | 33 | 32 | 31 | 29 | 28 |
単位:ml/kg/min
この数値は日本人の最大酸素摂取量の平均値と近いことから、自分の最大酸素摂取量と比較すると良いでしょう。
最大酸素摂取量は30ml/kg/minを下回ると生活習慣病のリスクが高まると言われているので、最大酸素摂取量を測定する際は、30ml/kg/minを切る事がないように普段からの運動が大切になります。
ランナーの最大酸素摂取量について
マラソンは持久力が最も求められるスポーツであるため、ランナーの最大酸素摂取量は一般平均よりも高くなる傾向があります。
ランナーの最大酸素摂取量
現役時代のトップクラスのランナーの最大酸素摂取量は、君原健司さんが84ml/kg/min、瀬古俊彦さんが81ml/kg/min、増田明美さんが70ml/kg/minでした。
また、70歳の市民ランナーの平均が40ml/kg/minで、この数値は日本人30歳男性の平均値とほとんど変わらないため、マラソンが習慣化している人の最大酸素摂取量は高いと言えます。
ランナーの最大酸素摂取量の評価の目安
しかし、ランナーの立場として最大酸素摂取量の値を評価するにはどうしたらいいのでしょうか?
ランナーはご存知の方も多いと思いますが、ガーミンのランニングウォッチは最大酸素摂取量を測定してくれます。
また、ガーミンは段階別に最大酸素摂取量の数値を公開しています。
男性 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 |
極めて優秀 | 55.4 | 54.0 | 52.5 | 48.9 | 45.7 | 42.1 |
かなり高い | 51.1 | 48.3 | 46.4 | 43.4 | 39.5 | 36.7 |
高い | 45.4 | 44.0 | 42.4 | 39.2 | 35.5 | 32.3 |
標準 | 41.7 | 40.5 | 38.5 | 35.6 | 32.3 | 29.4 |
低い~かなり低い | <41.7 | <40.5 | <38.5 | <35.6 | <32.3 | <29.4 |
女性 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 |
極めて優秀 | 49.6 | 47.4 | 45.3 | 41.1 | 37.8 | 36.7 |
かなり高い | 43.9 | 42.4 | 39.7 | 36.7 | 33.0 | 30.9 |
高い | 39.5 | 37.8 | 36.3 | 33.0 | 30.0 | 28.1 |
標準 | 36.1 | 34.4 | 33.0 | 30.1 | 27.5 | 25.9 |
低い~かなり低い | <36.1 | <34.4 | <33.0 | <30.1 | <27.5 | <25.9 |
この数値を見ますと、ランナーとしては、日本人の平均値が標準と捉えているので、ランナーとして結果を残すには最低でも日本人の平均値以上はあった方が良いでしょう。
最大酸素摂取量とランナーの能力は必ずしも関連性はない
ランナーとして結果を出したい人は、最大酸素摂取量を高めるために心肺機能を鍛えるに越した事はありません。
私もマラソン以外にも水泳を積極的に取り入れて心肺機能を高めてきました。
しかし、最大酸素摂取量の平均値を見てわかるように、年齢を重ねると最大酸素摂取量は落ちているのが分かります。
ガーミンの指標でも高齢ほど基準の数値が下がっている事から、どんなスーパーアスリートでも最大酸素摂取量は年齢とともに下がります。
それでも、僕(30代)よりも年配の方でも、僕の記録(3時間35分23秒)を上回っているランナーはたくさんいます。
確かに最大酸素摂取量が高いほうが、大きなエネルギーを生みやすくなるため、持久力は高くなります。
しかし、いくら大きなエネルギーを生み出しても、ランニングフォームが悪かったり力んでしまうと、無駄にエネルギーを消費するため後半の失速につながってしまいます。
そのため、最大酸素摂取量が平均より低くて悩んでいる方もいますが、エネルギーを効率よく使えば無駄なエネルギーを消費しなくてすみます。
車で考えると分かりやすいですが、いくらガソリンなどの燃料を多く入れても燃費が悪ければ、燃料を入れた割に走行距離が少ないという事です。
ただし、エネルギーを効率よく使うにはトレーニングを継続しておこなう事が必須なので、ランナーの方もそうでない方も、最大酸素摂取量にあまりとらわれず、普段からの運動をしっかりやっていれば、そこまで気にする値ではないのかなというのが僕の考えです。